専業主婦世帯に忍び寄る貧困

日本経済新聞2019年10月18日の夕刊に「専業主婦世帯 忍び寄る貧困」という記事がありました。

かつて日本の標準的な家庭だった専業主婦世帯に、貧困の影が忍び寄っている。18歳未満の子供がいるケースで貧困率が約1割に上ることが、独立行政法人の労働政策研究・研修機構(JILPT)による調査で分かった。子育て世帯の平均をおおむね上回る。夫の収入がリストラなどで減っても、「男が家計を支える」という固定観念から抜けられないようだ。

私も、自分の狭い世界の中で知っている女性たち(母や親せきや近所の人たちや先に結婚した友人たち)がみんな専業主婦であったため、何も考えずに「結婚したら専業主婦になる」と思っていました。ですから、結婚した相手が日本人でなかったこともありますが、「少しでもいいから稼いで欲しい」と言われたとき、とても驚きました。しかしながら結婚生活は驚きの連続で、自分の「常識」が世界からみると常識でなかったことも多かったため、前向きに考えてみることにしました。

それまでの私の考えでは小さな子どもは母親といるのがベストで、他人に預けるのは「かわいそう」というもの。けれども、子育てが初めてで「どうしたらいいのかわからない」という不安で自信のない自分、そして人間としても未熟な自分がほとんどの時間を使って一人の人間を育てるということに疑問を持ってもいました。先に母親になった友人たちやその子どもたちを見ていると、子どもたちは母親にそっくりになっています。自分にそっくりに子どもを育ててしまうことになるのかと思うと、(自分に自信がなくて)非常に心配になっていました。それに一年だけ経験した専業主婦というものが自分に合っていなかったということもあります。1歳のときに保育園に預けることにしました。

保育園では先生方に恵まれ、特に園長先生が「おうちの方々や保育園の先生たちとチームとなってお子さんを育てていきましょう」と言ってくださったのには、本当に気持ちが楽になりました。(逆に1年だけ保育園に入れなくて、幼稚園に子どもを通わせていたときに、その幼稚園の園長先生が何かがあると「お母さんの責任です」と責めるので、つらい気持ちになりました。)

シングルマザーの自分が働いて忙しくしていたことで、保育園の先生たちだけでなく子どもの同級生の親たちにも、そして後には小・中・高の先生方や、ボーイスカウトの指導者や野球・サッカーチームの監督やコーチといった方々にも、本当にお世話になりました。私がシングルマザーなので父親のロールモデルになるような人たちを求めていたのですが、父親としてかっこいい人たちがたくさんいて、ありがたく思いました。子育ては自分だけでやろうと思わず、みんなに助けてもらおうと考えたことは、よい判断ではなかったかと思います。もちろん、助けてもらえることを当然なことと考えず、自分がお子さんたちを預かれるときは預かりましたし、私の子どもをママ友が遊園地に連れていってくれるというときは、みんなのチケットを購入したりと自分でできることはしました。

また「自分が稼ぐ」と決意して必死に働いたわけですが、それが自分の成長になったかと思います。目標を決めてそれに向かって行動すれば、失敗も多々ありますが、最後にはきちんと達成できるものです。

私の母は専業主婦でしたが、子どもたちが手を離れてからは、外に働きにでることも可能でした。父は自営業で母は少しばかり手伝いをしていましたが、本当に少しでした。母は「外で働きたい。でも夫がダメというから」と言って、ボランティアで地区のお手伝いに忙しくしていました。「ボロくて小さな借家がはずかしい。家が欲しい」というのに働きに出ようとはしませんでした。後に私が稼げるようになったので、母の夢である小さなお食事屋さんをすることを叶えようとしたのですが、言い訳ばかりして、結局やらずに亡くなりました。今となればわかりますが、母は自信がなかったのです。「お金をもらえるようなことを自分はできるわけがない」という気持ちであったと思います。私は自分のことで忙しくて、母に寄り添うことができなかったのを後悔しています。人の背中を押したい気持ちが強いのは、その後悔があるからかもしれないです。

長々と書いてしまいましたが、言いたいことはふたつ。一つは、今の日本では、一般的に、家族の中で誰か一人だけに稼ぎを任せることがむずかしい状況になっているということ(家族の中で稼ぎ手が多い方がいい)。そして誰にでも「お金をもらえるようなこと」ができるということ。思考停止になって貧困に陥る人がいなくなりますように。

ABOUTこの記事をかいた人

著者。特許翻訳者。ユダヤ人富豪の義父に学び、自らも7億円の不動産資産を築いた不動産投資家という顔も持つ。 東京都出身。外資系メーカー、シティバンク勤務を経て、イスラエル国籍のユダヤ人と結婚。子ども二人に恵まれるも離婚。在宅で翻訳の仕事をフリーランスとしてしながら、シングルマザーとして子ども達を育てた。東欧からの移民の子で、14歳から働き、資産ゼロから財産を築いたユダヤ人の義父からは不動産投資を学び、投資物件(7億円)などの資産を築いた。著書に『ユダヤ人と結婚して20年後にわかった金銀銅の法則50』『ユダヤ人大富豪に学ぶ お金持ちの習慣』『貧困OLから資産6億をつかんだ金持ち母さんの方法』『お金の不安から自由になって幸せな女になる』がある。